日本特化の海外撮影支援を提供する、ニッポン・プロダクション。その姉妹会社、Storytailorsの制作責任者であるゼイナは、サウジアラビアをはじめ中東での映像制作を専門としています。
日本のフィルムメーカーやジャーナリスト達にとって、アラブ首長国連邦などの中東での撮影は文化・言語の違い、規制、気候など、多くの課題が生じる地域です。これらの課題解決に役立つのが、日本と現地の言語、文化、法律などを熟知したプロダクション・マネージャーやコーディネーターです。ニッポン・プロダクションは日本への深い理解と、Storytailorsの持つ独自のネットワークで日本と各国のギャップを埋め、日本のクライアントの快適な海外ロケを実現しています。
この記事では、ゼイナのメディア業界での歩み、彼女が自身の経験から得たもの、この業界での成功への貴重なアドバイスを、お届けします。
どのようにしてこの業界に入り、どのようにしてプロダクションマネージャーになりましたか?
私は映画制作、演劇、コミュニケーションなどの分野の学士号を持っていません。
しかし、この業界は私の夢でした。両親は私の夢に反対していました。そこで父と母を納得させるため、ビジネスとフランス文学の修士号を取得しました。
両方の大学を卒業した後、親しい友人が私にレバノンの有名プロデューサーを紹介してくれて、そこでスクリプターとして最初の研修の仕事を始めました。それと並行して、両親に内緒でこっそりオンライン書籍を購入し、映画業界について勉強していました。
各個人が初心者レベルの仕事で経験を積む中、私は徐々により多くの責任を引き受け、多様なスキルセットを開発しました。短編映画、CM、ミュージックビデオ、自主制作など、さまざまなプロジェクトに取り組みました。この経験のおかげで、制作の色々な面を理解し、専門知識を構築することができました。成績が良く、2本目のTVシリーズでセカンドADへ昇進しました。
そこから私の旅が始まり、監督のレベルに達するまでリーダーの座を登り詰め、自慢の両親からの応援を受けながら、自分の映画を監督、プロデュースしました。
制作中の最大の課題は何でしたか?また、それをどのように克服しましたか?
私はサウジ市場に参入するため、2年以上奮闘してきました。本当に困難の多い日々でした。
そして最終的には成功しました。 この経験をもとに、私はサウジアラビアに関する問い合わせを受け取るとすぐに、クライアントに次の注意点についてお願いしています。
文化の違い:サウジアラビアには独特の文化的・社会的環境があり、それが外国の制作チームにとって課題となる可能性があります。文化的規範、伝統、宗教的感受性を遵守することが、重要です。 徹底的なリサーチを実施し、現地の習慣を指導できる現地の専門家やコンサルタントと綿密に連携することが不可欠です。地元の協力者と強い関係を築き、オープンな対話を行うことで、文化的なギャップを埋めることができます。
許可の取得:サウジアラビアでの撮影には、政府当局からさまざまな許可を取得する必要があります。当局への許可申請のプロセスは複雑で、時間がかかる場合があります。許可申請プロセスは、承認までに十分な時間を確保できるよう、余裕を持って取り掛かることが重要です。現地の規制を乗り越えた経験を持つ現地の制作会社やフィクサーの協力は、非常に役立ちます。
極端な気象条件:サウジアラビアは砂漠気候で、高温で砂嵐が発生することもあります。こうした気象条件は、屋外撮影、機材のメンテナンス、キャストやスタッフの健康への課題となる可能性があります。より撮影しやすい季節に撮影を計画し、定期的な休憩をスケジュールに入れ、日陰、水、適切な機器保護などの必要な設備を提供することは、異常気象の影響を軽減するのに役立ちます。
総じて、サウジアラビアでの制作の課題をうまく乗り越えるには、綿密な準備、文化への配慮、現地の協力、柔軟性が鍵となります。作品ごとに条件は異なるため、プロジェクトの特定の状況と要件に基づいて戦略を適応させることが重要です。
私たちはサウジアラビアで優れたフィクサーを見つけました。柔軟で、返信も早いですが、外国人クルーとの経験は豊富ではありません。私たちには、彼と協力する以外の選択肢はありませんでした。クライアントの要望に応えなければいけないということを念頭に置きながら、最初のプロジェクトを引き受けました。 私は、当局が予告なく法律に加えるかもしれないあらゆる変更に備えて、24時間365日スタンバイして制作を編成しなければならないため、サウジアラビアの制作は過去も現在も大変です。
しかし今では、私たちはサウジアラビアでの制作で素晴らしい成果を上げており、より多くのことができると言えます。
プロジェクトが計画どおりに進まなかった時と、その状況にどう適応したかを教えていただけますか?
私たちは、大きな潜在的リピーターのクライアントへ協力し、5月4日と5日にサウジアラビアで、そして7日と8日にはカタールで、2つの大きな撮影を行いました。ラマダン期間、許可に対する政府機関の返答の遅さ、イード・アル=フィトル(祝祭日)のため、ほぼ1か月前から準備を始めました。私たちはすべての許可証が入手できており、出発する準備ができている状態でした。5月1日、新しい規制ができ、すべての許可が取り消され、再度申請しなければならなくなりました。まるでいたちごっこでした。両方のフィクサーは、私たちがすべての許可を取得するまで、オフィスから別のオフィスへと走り回っていました。私たちはサウジアラビアを終え、クライアントは6日にカタールへ渡航していました。
5日、カタールのドローン許可が拒否されました。ドローン撮影が必要な2日間、7日と8日は国内全土でドローン撮影は行うことができませんでした。幸いなことに、ドローンオペレーターが6日に撮影してくれていました。クライアントへ連絡を取ったところ、クライアントから深い理解が得られ、ドローン撮影のリストを求めました。このようにして、1日前にすべてのシーンを完成することができました。ドローンオペレーターが私たちの撮影のためにセットを離れることができなかったため、いくつか不足しているショットがありました。そこで私たちは、ドローンオペレーターと、ドーハのストック映像を彼の料金とのパッケージとして購入しました。
課題の評価に基づいて、チームはプロジェクト計画を修正し、現実的な目標を設定する必要があります。チームは団結して、直面している課題への解決策をブレインストーミングする必要があります。
プロジェクト全体を通じて、継続的な学習と改善という文化を育むことが重要です。チームが直面している課題を振り返り、学んだ教訓を明らかにし、将来同様の問題が発生しないように変更を行うようおすすめします。
すべてのプロジェクトはユニークであり、具体的な適応戦略はプロジェクトの性質、直面する課題、利用可能なリソースによって異なることを、常に覚えておく必要があります。適応するには、柔軟性、協力、そして必要に応じて計画やアプローチを調整する意欲が必要です。
クライアントから受けた最も珍しいリクエストは何ですか?また、どのように対応しましたか?
サウジアラビアの映像制作プロジェクト中に、クライアントからヤギのいる農場を含むシーンの撮影を依頼されたことがあります。
フィクサーは、これに伴う課題を認識していましたが、慎重に計画を立て、安全性と倫理的懸念を考慮して依頼に取り組みました。
実際の撮影中、フィクサーはヤギが逃げ出さないように指定されたセーフティーゾーンと柵を設け、管理された環境を確保しました。運悪く、一頭のヤギが行方不明になり、そのヤギは農場主のお気に入りのヤギでした。ドラマの撮影は始まっていました。フィクサーが私に電話して、農場主が撮影を中止してスタッフを退出させたいと言っていると告げました。私はフィクサーに、農場主を離れた場所に連れて行き、落ち着かせ、ヤギ1頭ではなく3頭分の料金を支払うようアドバイスしました。この解決策は上手く行き、撮影は順調に進み、誰もが満足する結果となりました。
長く厳しい撮影中、チームのモチベーションと集中力をどのように維持していますか?
長く厳しい撮影の間、チームのモチベーションと集中力を維持するには、効果的なリーダーシップ、コミュニケーション、サポートの組み合わせが必要です。
1. 明確な目標と期待される結果を設定する:撮影の目的、スケジュール、期待される結果を明確に伝えます。全員が自分の役割と責任を理解できるようにします。チームメンバーが明確な目的意識を持っていれば、モチベーションと集中力を維持することが容易になります。
2. 前向きで協力的な環境を育む:オープンなコミュニケーションになるよう促し、前向きな雰囲気を作り出します。チームメンバーの努力と成果を認め、評価します。建設的なフィードバックを定期的に提供し、成長と発展の機会を提供します。マイルストーンや成功を祝い、士気を高めます。
3. チームワークと協力を育む:チームワークを促し、チームメンバー間の協力の機会を作ります。同僚とつながり、サポートされていると感じると、人はモチベーションとエンゲージメントが高まります。 敬意、信頼、強調の文化を育みましょう。
4. コミュニケーションチャネルをオープンに保つ:チームメンバーに定期的に連絡を取り、メンバーの健康状態を評価し、懸念事項に対処し、最新情報を提供します。チームメンバーが自分の考えや懸念事項を安心して表現できる環境を作りましょう。フィードバックに積極的に耳を傾け、必要に応じて適切な措置を講じましょう。
5. モチベーションとインスピレーションを提供する:成功事例、インスピレーションを与える映像、クライアントからのフィードバックを共有します。
6. 身体的および精神的な健康に注意を払いましょう。
7.手本となる:リーダーとして、高いレベルのモチベーション、集中力、プロ意識を示すことが非常に重要です。プロジェクトに対する献身性、回復力、熱意を示しましょう。チームは、あなたの仕事への取り組みを見て、それに倣う可能性が高くなります。
制作業界に初めて携わり制作マネージャーとして成功するキャリアを築きたいと考えている人へ向けて、アドバイスをお願いします。
制作業界に初めて携わり、プロダクション・マネージャー/プロデューサーとして成功したキャリアを築きたいという目標を持っている人へ、考慮すべき重要なアドバイスをいくつか紹介します。
1. 実践経験を積む:制作業界で実践的な経験を積む機会を探し求めましょう。実践的な経験は価値ある洞察力を自分に与えてくれて、重要なスキルの開発に役立ちます。
2. 時間をかけて制作業界を徹底的に理解しましょう。さまざまな制作のプロセス、テクノロジー、トレンドを研究します。競争力と適応力を維持するため、業界のニュースや開発に関する最新情報を常に入手しましょう。
3. 強力な組織スキルを磨く:プロダクションマネージャーは、制作プロセスのさまざまな要素を監督する責任があります。成功するには、優れた組織スキルが必要です。スムーズなオペレーションを確保するため、リソースを効果的に管理し、制作スケジュールを作成し、チームを調整する方法を学びます。
4. コミュニケーションスキル:プロダクション・マネジメントでは、効果的なコミュニケーションが非常に重要です。さまざまなチーム、関係者、クライアントと定期的にやり取りすることになります。強力な対人スキル、積極的な傾聴能力、情報を明確かつ簡潔に伝える能力を磨きましょう。
5. 細部を重視する:細部に注意を払うことは、プロダクション・マネジメントにおいて非常に重要です。予算やスケジュールの追跡から品質管理の確保に至るまで、詳細を重視することで潜在的な問題を特定し、コストのかかるミスを防ぐことができます。
6. リーダーシップ能力を養う:プロダクション・マネージャーとして、チームを率い、プロジェクトを成功に導くことになります。問題解決、意思決定、チームメンバーのやる気を引き出すなど、リーダーシップスキルの向上に取り組みましょう。自身が手本となり、他の人が最善を尽くすよう鼓舞しましょう。
7. 柔軟性と適応性を保つ:制作業界はダイナミックで常に変化しています。柔軟性と適応性を含む考え方を磨きましょう。 新しいスキルを学び、さまざまな役割を模索し、業界のトレンドに適応することに対して、オープンでいましょう。順応し進化する能力は、この競争の激しい分野での成功に役立ちます。
8.学び続ける:専門能力の向上のための学びと投資を決して止めないでください。常に好奇心を持ち、成長の機会を求めて時代の先を行きましょう。
成功したキャリアを築くには時間と献身が必要であることを、忘れないでください。情熱を持ち続け、困難に耐え、優れたものを目指して努力を続けてください。