海外撮影では、現地との調整やロケハン、撮影許可の取得、スタッフ手配など、多くの工程を支える撮影コーディネーターやプロデューサーの存在が欠かせません。特にメキシコをはじめとするラテンアメリカでは、文化や言語、仕事の進め方の違いを理解する現地コーディネーターの存在が、海外撮影の成功を左右します。
今回は、メキシコを拠点にラテンアメリカ各国で海外撮影を支えてきた国際プロデューサー・宮良高雄さんにお話を伺いました。日本とメキシコ、二つの文化の中で育った経験や、スペイン語習得のエピソード、海外撮影で大切にしている考え方について語っていただきます。
日本とメキシコ、二つの文化が育てた国際プロデューサー
まずは自己紹介をお願いします。
宮良高雄です。ニッポン・プロダクションでは、アメリカ大陸を担当するInternational Producer(国際プロデューサー)として、メキシコをはじめとするラテンアメリカ各国での海外撮影をサポートしています。
日本の制作チームと現地スタッフをつなぐ橋渡し役として、ロケーションの手配や撮影許可の取得、現地スタッフ・機材の手配など、海外ロケ全体のコーディネートを担当しています。
映像業界に入ったきっかけを教えてください。
映像業界に携わるようになったきっかけは、1996年に入社した旅行会社で撮影部に配属されたことでした。旅行業務だけでなく海外ロケのサポートにも携わる中で、多くのスタッフと協力して一つの作品をつくり上げる面白さを知り、映像制作の仕事に魅力を感じるようになりました。それ以来、海外撮影や映像制作に携わり続けています。
日本からメキシコ・ラテンアメリカで仕事をするようになった経緯を教えてください。
私はメキシコで生まれ、幼い頃から日本とメキシコを行き来しながら育ちました。3歳から12歳まで、そして14歳から15歳までは日本で生活し、それ以外の期間はメキシコで過ごしています。
二つの国の文化や価値観に触れながら成長した経験が、現在の仕事の原点になっています。日本の制作チームと現地スタッフ、それぞれの考え方を理解できることが自分の強みであり、海外ロケを円滑に進めるプロデューサー・ローカルコーディネーターとして活動する原点になっています。
普段はどのような業務を担当されていますか?
日本のテレビ番組や映像制作では、プロデューサーやディレクターと現地コーディネーターをつなぐ役割を担っています。海外撮影では、言葉や文化、仕事の進め方の違いから思わぬすれ違いが生まれることもあります。そのため、見積もり作成やスケジュール調整、現地スタッフや機材の手配などを行いながら、双方が安心して撮影に臨める環境づくりを心掛けています。「宮良さんが間に入ってくれて良かった」と思っていただけるよう、一つひとつのコミュニケーションを大切にしています。
スペイン語と異文化理解が海外撮影を支える
スペイン語を学んだきっかけを教えてください。
本格的にスペイン語を学ぶことになったのは、15歳でメキシコへ戻り、現地の高校へ入学したことがきっかけです。当時はスペイン語がまったく話せず、授業の内容はもちろん、先生や友人との会話もほとんど理解できませんでした。
不安もありましたが、「話せるようになるしかない」という環境だったことが、語学を身につける一番の原動力になりました。今振り返ると、あの経験があったからこそ、日本とスペイン語圏をつなぐ仕事ができているのだと思います。
どのようにスペイン語を習得されたのでしょうか。
一番の先生は、高校時代の友人たちでした。
高校生らしく、最初に教えてもらったのは教科書には載っていないようなスラングや悪い言葉ばかりでした(笑)。当時はスペイン語を話せない生徒が珍しかったこともあり、クラスメートとの会話を通じて自然と身につけていきました。最初は覚えた言葉を先生にもそのまま使ってしまい、周囲が大笑いすることもありました(笑)。そんな失敗も含めて、毎日が新しい発見の連続でした。
日本人だからこそ強みになると感じることはありますか?
メキシコをはじめラテンアメリカで仕事をしていると、日本に親しみや尊敬の気持ちを持ってくださる方が多いと感じます。
海外撮影では、文化や仕事の進め方の違いから思わぬハプニングが起こることもありますが、日本人の誠実さや時間を守る姿勢、相手への気配りは高く評価されることが多く、そうした積み重ねが信頼関係につながっています。撮影が終わる頃には、日本人スタッフと現地スタッフが国籍を超えて打ち解けることも珍しくありません。その姿を見るたびに、文化や言葉を超えた信頼関係が、良い作品づくりを支えているのだと実感します。
日本とメキシコの橋渡し役として心掛けていることを教えてください。
私が大切にしているのは、「言葉を訳すこと」ではなく、「お互いの考え方や文化を理解してもらうこと」です。日本では当たり前のことがメキシコではそうではないこともありますし、その逆もあります。そうした違いを事前に丁寧に伝え、お互いが納得した上で仕事を進めることが、海外撮影を円滑に進めるためには欠かせません。
日本とメキシコ、それぞれの文化や価値観をつなぐ橋渡し役として、双方が安心して仕事に取り組める環境をつくることが、私の大切な役割だと思っています。
メキシコ・ラテンアメリカだからこそ実現できる海外撮影

メキシコやラテンアメリカならではのロケーションの魅力を教えてください。
メキシコやラテンアメリカには、砂漠やジャングル、火山、セノーテ、世界遺産の遺跡、色鮮やかな街並みなど、日本では出会えないロケーションが数多くあります。セットやCGでは再現できない本物の景色や空気感が、映像に大きな説得力を与えてくれます。
また、映画やCMの撮影が盛んな地域でもあるため、経験豊富なスタッフや機材がそろっており、高品質な海外撮影ができる環境も魅力です。
日本とは違うメキシコの撮影現場の魅力とは?
一番の違いは、現場の柔軟さです。
日本では綿密な計画を大切にしますが、メキシコでは天候や交通事情など、その場の状況に合わせて最善の方法を考えながら撮影を進めます。予想外の出来事にも前向きに対応する文化があり、日本の丁寧さとメキシコの柔軟性が合わさることで、より良い作品につながると感じています。
撮影コーディネーターとして大切にしていることを教えてください。
海外撮影では、事前準備と現場での柔軟な対応の両方が欠かせません。ロケーションや撮影許可、現地スタッフの手配を進めるだけでなく、天候や交通事情など予想外の状況に備え、代替案を用意しておくことも重要です。日本と現地のスタッフが安心して撮影に集中できる環境をつくることが、プロデューサー・撮影コーディネーターとして最も大切な役割だと思っています。
海外撮影を成功へ導くために大切にしていること
撮影を成功へ導くために意識していることを教えてください。
私が最も大切にしているのは、「事前準備」と「信頼関係」です。
海外ロケでは、どれだけ綿密に準備をしていても、天候の変化や交通事情、現地ならではの予想外の出来事は起こります。そのため、事前にできる限り準備を行いながら、「もし予定どおりに進まなかった場合はどう対応するか」まで考えておくことを大切にしています。
また、最終的に現場を支えるのは、人と人との信頼関係です。日本と現地のスタッフが一つのチームとして協力できる環境をつくることが、私の役割だと考えています。
日本と現地をつなぐプロデューサーとして大切にしていることを教えてください。
私が意識しているのは、「言葉を訳すこと」ではなく、「相手の意図や背景まで伝えること」です。
日本では当たり前のことがメキシコでは異なる場合もありますし、その逆もあります。単純に言葉だけを通訳するのではなく、お互いがなぜその考え方になるのかを理解できるよう伝えることで、誤解やトラブルを防ぐことができます。
私は単なるプロデューサーや撮影コーディネーターではなく、日本とラテンアメリカをつなぐ橋渡し役でありたいと思っています。
忘れられない海外ロケと数々のハプニング
最も印象に残っている海外ロケを教えてください。
特に印象に残っているのは、Amazon Primeのリアリティ番組の撮影です。
日本から約200名、メキシコ側も約200名、総勢400名近くが参加する大規模なロケで、私は日本とメキシコのスタッフをつなぐ通訳兼コーディネーターとして、12名のコーディネートチームを率いました。
大人数の現場では、文化や仕事の進め方の違いから意見がぶつかることもあります。その際に大切にしたのは、どちらか一方の考えを押し通すのではなく、お互いの価値観を理解できるよう丁寧に伝えることでした。
撮影終了後、日本とメキシコのスタッフがお互いにハグを交わし、中には涙を流す人もいました。その姿を見たとき、国籍や言葉が違っても、一つの作品をつくり上げられることの素晴らしさを改めて感じました。
海外撮影ならではの忘れられないハプニングはありますか?
海外ロケでは、予想外の依頼やトラブルに対応する場面も少なくありません。
あるドラマ撮影では、ギャング同士の抗争シーンで使用する撮影用の特殊な小道具を急きょ手配することになりました。無事に準備できたときは、表には出ない部分ですが、現場を支える仕事の達成感を感じました(笑)。
また、ステディカムの重要な部品を紛失した際には、近くの自動車整備工場へ相談したところ、職人さんが部品を確認し、短時間で代用品を製作してくださいました。その部品は問題なく使用でき、撮影を予定どおり進めることができました。
こうした経験を通じて、メキシコには高い技術力や柔軟な発想を持つ人々がいることを実感しています。現地の方々に支えられて完成した撮影は、今でも心に残っています。
世界をつなぐプロデューサーとしてのこれから

この仕事でやりがいを感じる瞬間を教えてください。
やはり一番のやりがいは、完成した作品を見た瞬間です。
撮影中は、視聴者には見えないところで数多くの準備や調整、予想外のトラブルへの対応があります。それらを一つひとつ乗り越え、作品が放送や配信されたとき、「今回も無事に世の中へ届けることができた」と実感できる瞬間は、この仕事をしていて本当に良かったと思える瞬間です。
視聴者にとっては数秒の映像でも、その一瞬のために多くのスタッフが力を合わせています。その一員として作品づくりに携われることが、私にとって何よりのやりがいです。
今後挑戦したいことを教えてください。
今も一番熱中しているのは、この仕事です。
世界各国のコーディネーターと日々やり取りをする中で、新しい文化や仕事の進め方に触れられることが大きな刺激になっています。これからは、さらに大規模な映画制作や長期間にわたる海外ロケにも挑戦し、世界中のスタッフと協力しながら作品づくりに携わっていきたいと考えています。
私の目標は、日本と世界をつなぐ国際プロデューサーとして、より多くの国際共同制作に関わることです。これまで培ってきた経験やネットワークを生かし、日本の制作チームが安心して海外撮影に臨める環境づくりに、これからも貢献していきたいと思っています。
海外撮影に挑戦したい方へメッセージをお願いします。
海外撮影は、日本とは言葉や文化、仕事の進め方が異なるため、不安に感じることも多いかもしれません。しかし、その土地ならではの自然や文化、人との出会いは、日本では撮ることのできない映像を生み出してくれます。
特にメキシコをはじめとするラテンアメリカは、日本語の情報がまだ少ない地域でもあります。企画段階からでも構いませんので、現地でのロケーション選びや撮影許可、スタッフ手配、安全対策など、不安なことがあればぜひご相談ください。
安心して海外撮影に挑戦し、その土地ならではの魅力を映像として形にできるよう、現地から全力でサポートしていきたいと思っています。
日本と世界をつなぐ海外撮影プロデューサー
宮良さんのお話からは、豊富な経験だけでなく、「人と人との信頼関係」を大切にしながら海外撮影を支える姿勢が伝わってきました。日本とラテンアメリカ、それぞれの文化を理解し、双方が協力できる環境をつくることが、より良い映像制作につながっているのだと感じます。
ニッポン・プロダクションでは、メキシコをはじめとするラテンアメリカ各国で、海外ロケコーディネートやロケハン、撮影許可取得、現地スタッフ・機材の手配、ドローン撮影、通訳・翻訳など、海外撮影をトータルでサポートしています。


